女優の江角マキコさんの事件が世情を騒がせている。人気女優絡みということで、ニュースのみならずワイドショーでも盛んに採り上げられている。国会でも話題になり、官房長官や野党の党首達、ついには首相も言及する羽目に。
事件の経緯・顛末などについては、小生のような野暮天より、多くの方のほうが詳しいに違いない。それでも、念のため、下記サイトを利用させてもらって、大雑把ではあるが、経緯を把握しておきたい: (asahi.com) タイトルには、「国民年金PRの江角マキコさんは未加入、社会保険庁抗議」とある。これだけでも、大凡のことは分かるかもしれない。「昨年7月からポスターやCMで国民年金のPRをしている女優の江角マキコさん(37)が国民年金に未加入だったことが22日、わかった」というのが、騒ぎの発端である。 さらに、「社会保険庁は契約時に広告会社が提出した「加入している」との書面を信用していたが、マスコミの問い合わせを受けて所属事務所に確認したところ事実を認めた」とある。その結果、「同庁の厳重抗議を受け、江角さんは19日に加入したという」 そうか、未加入だったのか、で、過去、二年間分だったかを支払ったのだとか。御蔭で釈迦保険庁としては加入者が一人増え、その上、なかなかの額が懐に入った。メデタシ、メデタシ…、という話しではないようである。 もう一つ、別のサイトを見ていただこう:(NIKKEI NET) 「福田康夫官房長官は22日午後の記者会見で、「国民年金がもらえなくなるかもって言ったの誰?」などと国民に保険料の支払いを強く促す社会保険庁のCMに昨年出演していた女優の江角マキコ氏自身が、国民年金の保険料を未納だったことについて「いやあ、面白い話というか、深刻な話。ちょっと間が抜けたような感じもする」と感想を述べた」とか。 そうか、そういう問題だったのか。ハッピーエンドの物語ではなかったんだ。 このサイトによると、江角さんはCMの中で、「将来泣いてもいいわけ」、「保険料納付はみんなの義務です」といった、一部の人には過激とも受け取られかねない科白を、もとい、コピーをメッセージとして発していたとか。 そういえば、小生も、一度か二度は見たことがあるような。 この件につき、江角マキコさんの所属する事務所、「(株)研音」より、「この度は、弊社所属・江角マキコが、国民年金に未加入であったことについて社会保険庁様をはじめ、関係者各位、及び多くの皆様に多大なご迷惑をおかけ致しましたことを、深くお詫び申し上げます。二度とこのようなことの起こらぬよう、十分注意する所存でございます。書中にて誠に恐縮ではございますが、お詫び申し上げます。」とお詫びのメッセージをネットでも流している。 江角マキコさんのプロフィールは、ここを参照。 さて、要するに、一体、何が問題なのだろう。女優である江角マキコさんが、CMの中で、「国民年金に加入したら」とメッセージを発していながら、その実、当の本人が国民年金に加入していなかったことが問題なのだろうか。 それとも、社会保険庁とのCM契約の際に、広告会社が提出した「加入している」との内容に偽りがあったことが問題なのか。 あるいは、そもそも、いくら多忙を極めるタレントとはいえ、CMが国民年金に関わるものだということくらいは認識していたのだろうし、だったら、ほんの一瞬でもいいから、本人の国民年金手帳を確認するってのが常識じゃないか、その程度のこともしていないのってのが、問題なのか。 改めて言うまでも無いことだろうが、女優に関わらず、あるいはタレントに限らず、人気のある方がCMに起用されることは、珍しくない。というより、余程、個性や広告の対象となる商品のイメージに合致する素人(無名の人)でないかぎりは、当代の人気の人物が広告のキャラクターに使われるのは、当然のことなのだろう。 が、必ずしも当然ではないのは、では、そのタレントが何らかの商品のCMに起用されても、そのタレントがその商品を愛用・常用・愛玩・活用しているわけではないということである。 例えば、Aというメーカーのビールを某タレントが宣伝したからといって、そのタレントがそのビールを愛飲しているとは限らないだろうということは、一つの暗黙の了解があると思える。CMの中で、「うまい!」と、さも、本当らしくコピーを語っていても、実生活では他のメーカーのビールを飲んでいるかもしれないし、あるいは、ビールは飲まなくて、専らウイスキーやワイン、あるいは焼酎が好みかもしれない。それどころか、酒は一滴も飲まないことだってありえる。 しかし、だからといって、誰もそのタレントを非難することはないし、CMを流すメーカーが非難の嵐の渦中に…ということもない。 このことは、商品がビールでも、車でも、食べ物でも、電化製品でも事情は同じであろう。 では、何故、今回、江角マキコさんの件が問題になったのだろうか。 広告会社やタレントを非難する政治家や役人たちは多いのだろうけれど、年金でまるっきり無駄な年金施設を作り、そしていまや次々に施設を処分せざるをえない環境にある、役人達に何を言う資格があるのだろいうという思いは、憤懣やるかたないが、この際、脇に置いておこう。 誰が江角マキコさんを起用しようと決めたのかは分からないが、彼女のインパクトのある個性と、いかにも彼女なら自分なりの主義主張をもっていそうで、その彼女に国民年金への加入を社会へのメッセージとして訴えてもらえば、国民年金への関心が多少なりとも呼び覚まされ、うまくいけば、加入者の増加も、と目論んだのかもしれない。 その際、江角マキコさんにCMを依頼した時に、彼女が国民年金に加入していることは必要なことだったのだろうか。そもそも、必要なのは、江角マキコさんというタレント性だけだったのではないのか。 彼女自身が加入などしてなくても、要は、芸能人であり人気女優であり自己主張するのが似合うという芸能界でのイメージ上の<彼女>にメッセージを発してもらえれば、それでよかったのではないか。 政治的な主義主張を、CMとか演出ではなく、当然、出演料(契約料)もなくて、まさに当該の人物の信念に基づく言動であるかのように語るなら、それは騙りであり、問題ということになるのではないか。 それとも、やはり、CMの素材が国民年金であり、タレントのイメージも大切だが、当人も加入してくれていないと、メッセージに説得力がないということなのか。 国民年金が<商品>だったから、実生活における彼女がその商品を愛用(この場合、加入ということになるが)していなかったことが問題になる、ということなのか。 となると、国民年金は、それだけ、他の<商品>とは重みが違う、そんじょそこらの商品とは格が違う、ということなのだろうか。(この議論の際には、社会保険庁との広告会社との契約の際、彼女は加入していないのに加入していますと虚偽の申請をしたことは度外視している) 警察などで、一日署長を若い女優などが行うこがあるが、そうした女優達は、私生活において完璧に立派な方たちなのだろうか。不倫などをしないのか。たまに借金の踏み倒しなど、あるいは違法な薬物を使用したりしないというのだろうか。たまたま、露見しなかっただけなのか。あるいは、その前に、一日署長のお願いをする際に、事前に素行調査などを行うのだろうか。 女優に限らず、タレントはイメージを売り物にするのではないのか。私生活において、碌でもない人、料理や家事など一切しないグータラであっても(そうでないことを願うけれど)、演技や舞台で素晴らしい虚像を見せてくれるなら、それでいいのではないか。そういう考え方は、公的機関には通用しないのか。 やはり、民間の企業の商品とは、公的機関の<商品>とは、截然たる違いがあるということなのだろうか。 ま、何はともあれ、小生は、タレントである江角マキコさんが好きである。特に、「ショムニ」での彼女が好きである(だからといって、私生活の江角マキコさんがどうというわけではない。そもそも知りようがないし)。国民年金加入の宣伝という仕事がきても、一切、自分で加入を確認しようとしない彼女の大らかさが大好きなのである。 「ショムニ」カムバック! (但し、庶務だよ、(警察)署務じゃないよ。) (04/03/26)
by at923ky
| 2005-05-22 10:37
| コラムエッセイ
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