[「日本で初の人間BSE患者発生 50代男性死亡」というニュースが昨日、日本中を駆け巡った。以下、各誌の関連情報をピックアップしておくと:
BSE(牛海綿状脳症)が原因とされる「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」(vCJD)の症例が、日本で初めて確認された(各紙)。【今回の事態が、国内の牛肉消費や米国牛肉の輸入再開問題に影響を及ぼす可能性も出ている】(朝日) 感染が確認されたのは昨年12月に51歳で死亡した男性で、【男性は89年ごろ、英国に約1カ月の渡航歴があり、厚労省は英国で感染した可能性が高いとみている】(毎日) たった1カ月の滞在で感染するのかという疑問もあるが、【それでも同委員会(注・厚生科学審議会クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会)が英国滞在を理由とするのは、当時の英国でBSEが猛威をふるっていたからだ】(朝日)という。ただし、【この患者が日本で感染した可能性も、同委員会の関係者は「完全には否定できない」としている】(同) 8日に米国産牛肉の輸入再開についての日米専門家会議が開かれる予定だが、【BSE発生を理由に輸入を停止した米国産牛肉の輸入再開の行方が不透明になってきた】と『読売』は書いている。 【農林水産、厚生労働省の両省は、BSEの全頭検査緩和など国内対策や米国産牛肉の輸入再開交渉を既定方針通りに進め、可否の判断は、内閣府食品安全委員会の科学的な判断に委ねる方針だ】と『産経』は伝えているが、、『毎日』は【夏前にも見込まれていた米国産牛肉の輸入再開も、秋口以降にずれ込みそうだ】と指摘する。 (転記終わり) そこで小生がBSE問題がマスコミなどを賑わせていた頃に書いた関連コラムをここに転記する。既にメルマガにて公表済みである。 (05/02/05 記)] 4月9日付け朝日新聞朝刊の「ポリティカにっぽん」に、同社コラムニストの早野透氏による「BSEから日本病が見える」という一文が掲載されていた。 かのBSE問題で、大臣の諮問機関である「BSE問題に関する調査検討委員会」が2日発表した報告は「重大な失政だった」と断じたことは、最早周知のことであろう。 イギリスで猛威を振るったBSEの侵入を他国は防げたのに、何故、日本は防げなかったのか。結局のところ、日本ではおざなりに通達だけですませてしまい、結果として海外の教訓や警告を何ら生かせなかった。そしてその穏便なる日本の対応というのは、事を荒立てると牛肉が売れなくなるからという極めて情ない理由から決定されていたというのだ。 報告書では「旧態依然たる食糧難時代の生産者優先・消費者保護軽視の体質」と続いている。厚生労働省も独自に海外情報を入手しており、農水省への勧告をすべき立場にありながら、縦割り行政の弊害をあからさまに示すだけに終わり、やはり結果として何の役割も果たすことはなかった。 要は政官業の癒着の構造が諸悪の根源なのだというのだ。狂牛病問題でも農林関係の族議員が農水省の政策の決定過程に過度に介入し、農水省と族議員そして業界の共犯の中で狂牛病問題は、こんなにまで拡大したわけである。 日本の農水省は、国内の農業・漁業・林業を、徹底して破壊してきた。選挙のための保護には血眼になるが、食糧安保に関わる根幹において、これ以上は考えられないほどに国家を荒廃させたのである。これには補助金などに縋る農業関係者の責任も重いはずである。 が、何よりも、このコラムの中で軽く触れるだけで通過しているマスコミの責任は、あまりに追及されないのが、歯がゆい。コラムの中で早野氏は、「センセーショナルで集中豪雨的な」報道の半面、「食の安全」の専門家に乏しく欧米の対応の報道も不十分だったという報告が耳に痛いと述べるに止まっている。 その後、コラムでは、さっさと論点を移していく。これだけ問題が山積しているのに、政界は、横浜市長選も京都府知事選をみても、与野党が相乗りするばかりで、これでは国民は???であると続けている。 第三の権力と呼ばれるマスコミの責任は、実は、政官業の責任と同等か、それ以上に重いのではないかと小生は考える。政官業は、いわば、利害当事者で一般消費者より自分たちの既得権を守るのに汲々とするのは、よくはないが分かりきった構図なのである。 それに比して利害当事者でないはずのマスコミは、肝心なときは(海外で警告を発せられている云々の情報が発信されているときなど。そしてその情報を受けた農水省の対応の鈍さ)は、ほとんど扱いをなきに均しくし、結果としてことが騒ぎになると、農水省の対応が拙かった、大臣の判断は間違っていた、そして全国の狂牛病パニックを騒ぎ立て煽り立てるばかりだったのだ。 田中金脈問題で立花氏がマスコミを通じて、追究を始めたとき、そんな事実など、わが大マスコミ(新聞)では誰もが知っている問題だよと鼻でせせら笑っていた。 何だ、知っているなら、ちゃんと報道すべきじゃなかったのか。 でも、実際には大マスコミは政官業の癒着の構造の中にベッタリと組み込まれていて、それを怪しむでもないのだ。 かの長野県知事の田中康夫氏が「脱記者クラブ」宣言をしたときも、大マスコミは田中知事に怒るだけで、反省の欠片もないのだった。もう、政府や業界の広報担当という既得権たっぷりの役割に全く慣れ親しんでしまって、そのことの意味する腐敗の構造に見向きもしなければ、気づきもしない…。 個人情報保護法案が今、問題になっている。実質的にこの法案でいう「個人」とは、政治家や官僚を意味していて、彼らをマスコミの取材攻勢からいかに守るかに苦心している。ところが、その際、大マスコミはちゃんと一定の取材の可能性は確保されている。保護されるわけである。 つまりは、大マスコミには、もう、政府や官僚を追及する姿勢がないということを政官業の関係者は見切っていることを、裏書しているのである。 政官業と大マスコミの癒着の中で、時代はさらに閉塞状況を露にしていくのだろう。日本病の病根は、底知れないほどに深いのである。 (02/04/09)
by at923ky
| 2005-02-05 14:45
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