過日、パソコンが不調になり、Windowsがまるで立ち上がらなくなった。幾度、再起動しても同じメッセージを示す画面が現れ、どのキーを押しても画面が消えるというのである。
こうなると、システムに弱い素人の小生には、手の施しようがない。仕方なく、業者を呼ぶことにするが、その間の数日は、ネットにつながりを持てない日々となってしまった。 それどころか、そもそもWindowsが開けないのだから、パソコンを使うこと自体が、論外という状況なのである。 小生は、ホームページを持っており、そこをベースにメールマガジンを発行している。 仕方なく、小生は近所の図書館のインターネット体験コーナーへ出向き、パソコンを借りて、ホームページに事情を書き込み、同時に配信予定のメールマガジンが発行できなくなったことを告げる号外の号を急遽、配信した。 その上で、土曜日からほんの数日、ネットとは繋がりを持てない日々を過ごすことになったのである。数日とはいうが、正味二日あったかどうかだ。 が、そのホンノ僅かの時間が、ネットの世界で様々な人々と関わることを習いにしていた自分には、とても寂しく、また、宙ぶらりんの時となったのである。 週末の日曜日は、一日がとっても長かった。遅めに起きたのだが、それでもベッドでゆっくり惰眠を貪り、かつ、少々の読書をして10時半頃、ようやく起き出す。 好きな刑事物のドラマを見ながら洗濯。実際には、ワイシャツの襟首に石鹸を塗りこむなどして、後は洗濯物を洗濯機に放り込むだけだが。 洗濯機が回っている間、軽い食事を摂り、お茶を啜りながら新聞を斜め読みする。 普段なら、食事もそこそこにネットに接続しているはずだ。が、まだ、洗濯機が回っているし、テレビをオフにしてロッキングチェア-に潜るように座り込んで、読書と居眠り。これが一人暮らしの小生には至福の時である。 やや年を取って、目が疲れやすくなり、また近眼の気も加わってきたので、活字が細かいと十頁も読まないうちに本を手放し目を閉じてしまう。そのまま寝入る時もあれば、ふと目が開き、続きを読むこともある。 まだ、洗濯機が回っている。実は、小生は洗剤が僅かでも残っていると不快に感じるので、一度濯ぎまで終わっても、再度、スイッチを入れて最初から回すことにしているのだ。 やがて気が付くと、午後の二時。まだ、時間はタップリある。ふと、やっぱり業者に電話しようと思い立つ。パソコンがこのままでは埒が開かないのだし。 この頃になると、さて、そろそろせっかくの日曜日だし、メルマガ用に、あるいはホームページ更新用に、何か文章を書こうかと思い始めるはずだ。 ネットが忙しい中で、読書だけは欠かしたくないので、一日に最低50頁は読んだらネット参入を自分に許すというルールを課しているのだ。で、午後の2時や3時頃ともなると、そろそろ50頁は読み進んでいるから、もう、ネット参入していいんじゃないって思い始めるのだ。 が、今日はネットどころかパソコンもない。従って、文章書きもできない。 そう、小生は、パソコンがないと文章を綴ることもできない習性が染み込んでしまっているのである。それはワープロを使っている頃からの習癖の延長でもある。昔、勤めていた会社で英文タイプライターを打っていたこともあり、キーボードには慣れ切っている。 同時に、自分は無器用なもので、ノートに文章を綴る際に、筆先に目一杯力を入れてしまう癖がある。ちょっとした数枚程度の分量のものなら、支障がないが、ある程度を越すと、もう、腕も上がるし、ペン先もすぐに痛む。何本、万年筆をダメにしたことか。ボールペンでさえ、折ったことが何度もある。 そこにワープロの登場だ。小生は89年の1月にワープロを購入して、初めて、小説に挑戦した。数十枚程度の小品だ。しかし、出来上がりが数十枚であって、実際に書いたものは、書き損じを含めれば、その何倍も書いている。清書を加えたら、十倍は完成品に至るまでに書いていることになる。ペンで書いていたら、とっくに腕が上がっているはずなのだ。 今はもう、ワープロもない。パソコンのみである。そのパソコンがストを起こして動いてくれない。小生は、翼をもがれた状態にあるのだ。 うたた寝をしたり、読書したりしているうちに、気が付くと、3時になろうとしている。慌てて洗濯物を干す。空を見ると、今にも泣き出しそうな感じだ。ふと、この際だから、パソコンの修理の際にメモリーを増やしておこうと思い立つ。 決断が付かないままに3時半を回る。再度、外を見ると、あーあ、降り出しているじゃないか。これだからな。もっと早くその気になっていたら、雨になる前に出かけられたのに…。 切羽詰らないと決心がつかないのが小生の気質なのだから仕方ないと思いつつ、外へ。スクーターに乗りパソコンショップへ。店内に入ると、目の毒と思いつつもソニーの最新式のデスクトップパソコンのコーナーに足が向く。テレビも見られるし、画面が綺麗だし、なんといっても、パソコンのスタイルが恰好いい。欲しい! でも、今の手元不如意の状況を思い、諦めて、メモリーだけを買って、雨の中、図書館へスクーターを走らせる。 そう、インターネット体験コーナーで、メルマガの読者やホームページの来訪者にパソコンの不調を伝えるためである。最初の30分は無料で、追加の30分は百円。ということは、30分使ったら、一旦、部屋を出て、再度、借りれば、その日は空きのパソコンが数台あるのだから、ずっと、無料で借りられるというわけだ。 しかし、小生にそんな悠長なゆとりなどない。メルマガを発行する作業に入ったら、途中での中断は、借りているパソコンでは難しいのだ。 で、なんとか、1時間でホームページでの連絡と、緊急のメルマガを配信して、やるだけのことはやったと思いつつ、自宅へ帰る。時間は夕方の5時である。 それからまた、読書と居眠りの時を過ごす。通常なら、多分、二つ目の数枚程度のエッセイを書き上げる頃合いだ。が、そうはいかないので、ゆっくり読書ができる。 そういえば、パソコンを導入しネットに参入するようになって、小生はテレビを見る時間を極端に減らすようになった。あれほどのテレビっ子だった小生が、である。今も、テレビっ子の気味はタップリ残っている。放っておくと、一日中でもテレビを見て過ごす。テレビ視聴の合間に、ちょっと本を読むくらいの自分だったのだ。 が、今は、ネットを最優先にしている。それ以上に読書の時を大切にしている。ネットで何かメッセージを発信するにしても、自分が自分を見詰める時間を持っていないと、すぐに発信すべきメッセージが枯渇するのだ。読書しつつ、居眠りしつつ、静かな部屋に居つつ、小生は、パソコンに向かい、頭に浮かぶ想念を文章に綴っていくのだ。 そのためには、とにかくひたすら自分に向かい合う時間が大切になるのである。自分の中の本音をひたすらに探り出すのだ。 でも、今日は、何かが浮かんでも、メモを取っておくくらいで、何も書けない。従って、日曜日なら、夜の8時迄には三つくらいはエッセイなどが書けるはずが、そんなわけにもいかないので、ひたすら読書とうたた寝というわけで、時間を持て余している自分を見出したりするのだった。 そう、日曜日(正確には日曜日の夜半以降で、月曜日の未明ということになる)は、メルマガの配信日に当たっており、通常は、夜の八時ともなると、さて、どんな内容のメルマガにしようかと、ちょっとプレッシャーが懸かったりしている時間帯でもあるのだ。 しかし、パソコンが使えないので、何となくいつもとは調子が違い、その日曜日は久しぶりに出前を取ったりした。普通なら、8時頃には運動も兼ねて買い物に出かけるのだが。 何となくメリハリがつかなくて、グズグズした生活ぶりになっている。 ああ、ホームページの掲示板には書き込みがあるんだろうな。一日、三十人(三十回)ほどの来訪者があるのだし、何か自分で書き込みをしたいな、誰かの書き込みに応答を書きたいな、メールが来てるだろうな、返事を書かなくちゃ、あるいは、何処かのホームページを訪問して書き込みとかをしたいなと思いつつ、静か過ぎる部屋の中で、夜の更けるのを見送ってしまう。 まだ、夜半にさえならない。せっかくの何も用事のない夜。改めて読書に耽る。 パソコンが我が家に来て、二年と数ヶ月。ネットと繋がるようになって一年と数ヶ月。僅か、これだけの歳月が自分の生活を随分と変えてしまった。ネットを通じて、様々の人々と関わりを持つようになって、生活に張り合いもでてきたし、メルマガの読者がいることで、責任感らしきものも生まれている。 そうした関わりが一切なかった日々が遠いようにさえ、思える。何百人のネット上の相手。そうした顔の見えない人々が日本の何処かにいる。真面目だったり、積極的だったり、人の苦労を見て見ぬ振りの出来ない人が、小生の読者には多い。あるいは、希有な感性を持っている人、恋に苦しむ人、不倫に悩む人、哲学する人。きっと、今の器用で軽めを尊ぶ時代の風潮の中では、やや生き辛く感じている人、神経が細やかな人が多いように感じる。 肝腎の自分が、何処か、いい加減なところがあるのとは、大違いだ。でも、その自分も、一旦はネットに参入し関わりを持った以上は、その重荷の一端を担い、みんなで楽しくネットしたいと思っている。 ネット遊び。たかが遊び。けれど、子供を見れば分かるように、遊びというのは、本来は真剣なものなのだ。だから、小生も遊びの心を持って真剣に、あるいは真剣な心を持って戯れにネットの世界をみんなで泳ぎたいのである。 さて、ようやく夜半を回った。普通なら、メルマガの配信作業に入る時間。 でも、今日は違う。ひたすらに静かな夜の深さをゆっくりと味わっている。こんなゆったりとした気分で夜の底を歩くなんて、久しぶりだ。この貴重な時をしっかり味わっておこう。パソコンが直れば、また、熱い戦いが始まる。楽しく、真面目で、軽くて、面白くて、時には泣けたりもする、ネットという世界での戦いが。 (02/02/20)
by at923ky
| 2005-01-22 00:46
| 随想
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