「季題【季語】紹介 【10月の季題(季語)一例】」に載る季語(季題)の例の数々を見ていて、前々から気になる季語があった。
それが、表題にある「通草」である。 小生、この言葉が読めない。 一瞬、目にした時は、「道草(みちくさ)」かと思った。道草を俳諧の世界では風流にこう表記するのか、うん、「みちくさ」なら、何か書けるかもしれない…、小学校の時、行く当てもなくてなんとなくブラブラして時間をつぶしていたことがあった…ような記憶があるし…、大学生の頃、まあ、いい年をして道草でもないだろうけど、学校からの帰り道、下宿への道を一時間半掛けて歩いて帰ったことが何度となくあった…そのときのことを少し、書いてみるのもいいかな…。 ま、そんな思惑もあった(それどころか、場合によっては、久しぶりに「道草」を題名に、あるいはテーマに掌編を綴ってみるのもいいかも、なんて色気さえ抱いていたり)。 さて、「通草 季語」でネット検索して、びっくり。 「通草」って、「あけび」と読むのだ! 「E & C 「花通草」」によると、「通草と記して「あけび」と呼ぶ。秋、艶ややに熟した実をつけるので秋の季語とされるが花は春に咲く」とあるではないか。思わず、「あけびーー」と叫びたくなる気分だ。 「木通 (アケビ)」を覗くと、通草の実の画像を見ることが出来る。花の咲くのは4月ということで、「通草の花」となると、春の季語となるらしい。 驚いたことに、この木の名前についての説明が変わっている。「名前は、実が熟して割れたさまが、人の「あくび」に似ていることから「あけび」に変化していった。また、実は熟してくるとぱっくり口をあけたよう裂けることから、「開け実」→「あけび」になった、という説もある」というのだ。 駄洒落好きの小生に限らず、「あけび」という名前は音的にいろいろ応用してみたくなるが、それにしても、一つの説なのだとしても、「名前は、実が熟して割れたさまが、人の「あくび」に似ていることから「あけび」に変化していった」という説は、思わず口をあんぐり、である。また、意味もなく「あけびーー」と叫びたくなる気分に陥りそうになる。 堪えなくっちゃ。 「神戸・六甲山系の森林」なるサイトの「神戸・六甲山系の樹木図鑑 アケビ」という頁を覗かせてもらう。 ここでも、「名の由来」として「果実の色に由来する朱実。果実が熟すと口を開けるところから開け実など」とあるが、典拠が同じだからということか、それとも、本当のこととして真に受けるべきなのか。 ここでは花(木)の特性などを読んでもらうとして、「アケビの樹皮」を始め、「葉」、「雄花」、「雌花」、「果実」、はては「アケビの幹の断面」の画像までを見ることが出来て嬉しい。 ところで、小生、「通草」は「あけび」と読むことを知った時点で、今日の表題(テーマ)に「通草」を選ぶのは止めようと思った。 なぜって、個人的にはまるで馴染みがないし。「あけび」が「あけみ」なら、多少は切ない思い出もないことはない…って、これは見栄を張っているのだが。 しかし、「通草 季語」でネット検索して、ある項目を発見して、あとに引けなくなった。小生、「通草」にはまるで馴染みがないはずだし、記憶をたどっても、一度たりとも採り上げたことはないはず…なのに、あったのだ! しかも、つい最近! 季語随筆の「秋の雨…涙雨」(October 09, 2005)にて(わずか二週間前じゃないか!)、以下のように記述している: 「新潟県佐渡地方のことば」だという「秋の長雨。長雨が通草の実を腐らせてしまう事から言われる」といった意味合いだという「通草腐らし(あけびくさらし) 」なる言葉は情感があり、地方色というか風土感が漂ってくるようで興味深い。 ああ、そうだった、その時、「通草」って、「あけび」って読むんだと(恐らく)初めて知って、軽い感動を覚えたはずなのである。 が、その時は、「秋の雨…涙雨」というテーマの季語随筆を綴るのに懸命で、「通草」について調べるのを怠っていたのである。 いかに小生の言葉や思い入れが軽く浅いかが知れようというもの。 その意味で、「秋の雨…涙雨」と、「涙雨」を付したのは、今の小生の気分を予期していたかのようである(そんなわけ、ないけどさ)。 小生、この目で「通草(あけび)」を見たことはあったろうか。それとも、目で見ているけれど、特に関心を呼び覚まされることもなく行き過ぎていたのか。 「秋に長楕円形の果実を結び熟すと縦に口を開け、果肉は甘味がある」というけれど、小生は食べた記憶がない。でも、食べたことがないとも言い切れない。 冒頭近くで引用させてもらった「E & C 「花通草」」には、「負うた子やあけびの花に手をのべる (青々)」という句が載っている。 小さな手が塀越しに咲くあけびの花に思わず伸びる、そんなほのぼのした光景が目に浮かぶようである。 ネットでは、ほかに、「つゆじもに冷えにぞ冷えし通草くふ 芝不器男」が目に付くが、ここを覗くと、「蔓切れて揺るゝ通草を仰ぎけり 花櫻」など、幾つも作例を詠むことができる。 (面白いのは、大して面白くないのかもしれないけれど、作例の大半が「(通草)かな」と「かな」で句が締められていること。これは「通草」が、そうしたささやかで静かな感動を呼び起こすからなのだろうか。) 驚いたのは、同サイトの「山を歩いてゐると、よく思ひがけない所に、見事なのが木の枝からぶら下つてゐるのにぶつかることがある。紅葉の盛りの頃、よく路傍で売つてゐる」という記述の後段。 なるほど、考えてみれば、山のほうへ行けば、通草を路傍で売っていてもおかしくはないわけだ。小生が目にしていないか、気が付いていないだけのことなのだろう。 尚、「あけび」は、「通草」のほかに、「木通」や「山女」とも表記する。 「<木通(モクツウ)・あけび・山女>-気も血も水も通りやすくなる-」によると、「木通、通草、山女、いずれも和名では「あけび」と呼びますが、これは果実が 開裂する「開け実」からきたといわれます」という、ここまで読まれた方は再確認となる説明のあと、「ついでにどうして山女と書いたかといえばその開裂した姿が××に似ているから。「山のあけびは何見て割れた下の松茸見て割れた」というわけです」という説明が続く。 納得していいものかどうか、小生には判断に迷うところである。 「あけび」…、ただ、「呆気に」とられるばかりである。 ちなみに我が富山県は魚津市に「山女」という地名があるとか。ここに行ったら何か真相が分かるのか。 予断だが、小生は、「山女」と書いてあったら、「やまめ」と読みそうだが、明らかな間違いなのだろう。 と思ったら、さにあらず、言うまでもなく、魚の名前に「やまめ(山女)」のあることは、お魚さん好きの方、渓流釣りの好きな方ならずとも知られていることだろう。 「みやざきの味と花101:山女魚(ヤマメ)」を覗かせてもらうと、ヤマメは渓流の女王だと書いてある。 「宮崎のヤマメはその昔、川や海の水温が高く、椎葉、西米良、五ヶ瀬などの高冷地の清流に閉じ込められた陸封型の川魚である。体長20センチ前後、体に8~10個の長円形黒はんと黒点がある。海ヘ下ったヤマメはサクラマスと名を変え、銀白色で黒点はない。2年余りで体長60センチ、4キロになり、ヤマメより大きい。富山名物「鱒(ます)ずし」はサクラマスを使う」というのも、興味深い。 富山名物「鱒(ます)ずし」を郷里が富山の小生、折に触れ食べる機会があるけれど、なるほど、ヤマメの育ったマスを食べていたわけである。 …となると、魚津市の「山女」は魚に関連するのか、それとも、山の木である「通草(木通)」に縁があるのか、謎は深まるばかりである。 ということで、本日はお開き!
by at923ky
| 2005-10-24 00:06
| 季語随筆
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