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三途の川のこと

 あるサイトの掲示板で、千葉県には、三途の川という名の川があるという書き込みを見つけた。まさか、という気持ちと、でも、あっても可笑しくはないという気持ちとが相半ばしていたが、とりあえず、ネット検索。キーワードは、勿論、「千葉県 三途の川」である。
 すると、検索結果リストの筆頭に、「特別展点描  発見!「三途の川」」という表題のサイトが登場するではないか:

 その冒頭には、「さいたま川の博物館では、今年度第2回の特別展「日本人の他界観を探る-三途の川-」を開催しましす。」とある。
 続いて、「「三途の川」は、皆さんも知ってると思いますが、人が死んでからあの世に行くときに、必ず渡らなければならないとされた想像上の川です。しかし、特別展の開催を準備していた私は、ふと、「三途の川」という川は、実際にこの日本にあるのだろうかという素朴な疑問がわきました」とあるではないか。小生と同じような疑問を持たれる方がいらっしゃるわけだ。

 尤も、その方は、「早速、博物館にある『河川大辞典』をペラペラめくってみると、あったあった、全国に3ヶ所ありました」というわけで、小生とは比較にならない好環境に身を置いておられる。羨ましい限りである。
 とは言っても、小生がその立場にあって、ちゃんと辞典などを調べるかというと、これは怪しい。せめて辞典を枕に居眠りしないで居られれば、御の字なのだろう。



 上掲のサイトでは、その3ヶ所を写真付きで紹介してある。
<群馬県にある三途川>で、「群馬県甘楽町を流れる利根川水系の一級河川です。長さは、2.5kmで、白倉川に合流します」という。
 ついで、<千葉県にある三途川>で、「千葉県長南町を流れる一宮水系の二級河川です。長さは、4.5kmで一宮川に合流します」とのこと。
 さらに、<宮城県にある三途川>で、「宮城県蔵王町を流れる阿武隈川水系の河川です。長さは、1.8kmで濁川に合流します」とのこと。
 このあとには、「明るい「三途の川」」と題して、「「三途の川」は、暗い川ではないようです」という見解と、その理由などを示したりしている。車が三途の川に飛び込んでも、怪我人が出ないとか、興味深いが、まあ、そんな事例はありえないわけじゃなかろう。これが他の名称の川だと、ああ、無事だった、よかったね、で済むところが、川の名が三途の川だったりすると、おお、三途の川もやるじゃない、という話の流れになりかねないのかな、なんて、思ったりする。
「「三途の川」は、暗い川ではないようです」という見解の根拠として、「戦国時代の僧侶の准后道興(じゅんごうどうこう)は、『廻国雑記』の中で、文明18年(1486)6月、越中国(今の富山県)立山に登拝したときのことを、次のように書き残しています」という項は、ちょっと小生の耳目を引いた。
 抜書きされた一文は、「(略) かくて立山禅譲し侍りけるに、先三途川に いたりて思ひつゝけらる この身にて 渡るも嬉し ミつせ川 さりとも後の 世にハしつまし (下略)」である。
 小生は、富山出身の者として、立山禅定にはそれなりの関心がある。下記のような雑文を書いたこともある:
善知鳥と立山と

 それだけに、転記されている中の、「立山禅譲し侍りけるに」に見出される語彙は、ちょっと気になる。禅譲というのは、禅譲の本来の意味は、「皇帝が自主的に第3者へ皇帝の座を譲る事」であって、僧侶が立山で侍るようなものじゃないと思われるのだが。
 それで、念のために、『廻国雑記』を読めるサイトを示しておく:

 関連する下りを読むと、「かくて立山に禅定し侍りけるに、先づ三途川に到りて思ひつづけらる」とある。やはり、禅定なのだろうと思う。
 さらに、「この身にて渡るも嬉し、みつせ川。さりとも後の世には沈まじ」と、読みやすく表記されている。小生には助かる。
 小生、この『廻国雑記』なる書を知らなかった。小生には発見だ。流杉、立山町、宮崎(砺波)など、富山の人間なら馴染みある地名が登場する。追々、じっくり読んでみたい。

 さて、話を戻して、「特別展点描  発見!「三途の川」」の最後の項は、「奪衣婆が流行神になる」である。
「奪衣婆は、「三途の川」の岸辺にいて死者の衣服を剥ぎ取る老婆」」とのこと。
 それが、「幕末になると突如、諸願成就(しょがんじょうじゅ)の流行神になりました」という。さらに、「この様子が錦絵に描かれ、江戸庶民は奪衣婆に様々な願い事をしていました」として、幾つか面白い願い事の例が掲げられている。
 錦絵「三途川老婆」も、眺めるのは楽しいが、願い事も、その内容が興味深い。是非、サイトへ飛んで読んでもらいたい。

 さて、せっかくなので、「さいたま川の博物館」のサイトを示しておく:

 その中に、「「日本人の他界観を探る -三途の川-」の図録とリーフレット」というを発見した:

 展示パンフレットが表示されているが、面白そう。
 せっかくなので、目次だけでも掲げておく:

1.発見「三途の川」
  (1)三途の川があった?...... 5
  (2)真澄の見た「三途の川」.... 8
2.「三途の川」の真実
  (1)境界としての川..........11
  (2)仏教のあの世...........12
  (3)登場!「三途の川」........13
  ●コラム世界の三途の川.......14
  (4)描かれた「三途の川」.......15
  ●コラム描かれない「三途の川」...15
  ●コラム賽の河原...........20
  (5)この世とあの世..........22
3.奪衣婆のいるところ
  (1)奪衣婆の姿.............26
  (2)流行神になった奪衣婆......27

 長くなったので、本題の、三途の川のことについては、別の機会に。

                             (04/10/02)
by at923ky | 2005-07-23 23:14 | 古代・歴史・考古学


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