ジェットコースター的、遊戯的男女考察

 ジェットコースターに乗ったことのない人は少ないかもしれない。
 ジェットコースターでなくても、ディズニーランドのスペースサンダーマウンテンとかビックサンダーマウンテン、スペイン村のピレネーとか、後楽園のコースター「サンダードルフィン」や「ワンダードロップ」とか、こうした墜落系というのか、上昇し一気に落下する系というのか、そうした一切をここではジェットコースターに象徴されているものとする。
 その一番原始的というか素朴な形態は、滑り台に求められるかもしれない。それとも川などの土手の斜面とか。
 小生も、ガキの頃、滑り台を心行くまで滑った記憶がある(ような気がする。滑ったことがあるのは間違いない)。
 小生が十歳にもならない頃、田舎(富山)で、サンパチの大豪雪を経験したが、あまりに積雪が凄いので家の出入りは二階から、ということに相成ったが、屋根から落ちた雪と積雪とで堆く積もった雪山(小生には、山に感じられたのだ)に朝となく昼となく夜となく登ったものだった。
 大概は雪原に寝そべって雪の降る神秘な空を眺めたり、白い花びらが次第に降り積もる様子を飽かず見守っていたものだが、同時に雪遊びに耽ることも忘れるはずはなかった。




 ミカン箱に竹の棒を二本渡した即席の橇に乗っかって、ヤッホーとばかりに山の天辺から地上へ(といっても圧雪されていても一メートル以上の積雪状態になっている)一気に滑り降りたり、ワックスを塗るのももどかしく、やっとの思いで買ってもらったスキー板で恰好よく滑降してみたり(気分は三浦雄一郎?)、時には、そんな道具など使わないで、体を丸めて御尻をスキー板代わりに滑ったりしたものだ。
 ちょうど、その頃、小生の記憶では小学校のグラウンドに自衛隊がやってきてブルドーザーなどを使って雪掻きをしていったはずなのだが、ハッキリしない。ただ、校庭に小高いスキー山が出来たのは、間違いなくその頃のことだった。
 後年、帰省の折など駅から我が家への十五分ほどの道のりをわざわざ小学校の校庭を通るように選んだものだったが(実を言うと保育所以来の初恋の人の家が校庭のすぐ脇にあった!)、グラウンドを横切ると、校庭の隅にプールと並ぶようにして、スキー山を望むことができる。
 人気のない校庭の片隅のスキー山がとっても小さくて、あの天辺からの滑降がダイナミックに感じられたなんて、不思議なくらいに感じたものだった。
 ま、余談はともかく、小生もささやかながら、ジェットコースター経験はあるということを言いたかったのだ。

 つまり、男(の子)だって、そんな豪快な気分を与えてくれる経験は大好きなのだ。
 それが、ある程度以上の年齢になると、何故か、ジェットコースターとなると女性の大好きな乗り物となってしまう。男性が乗っているとしても、女性との付き合いで、というパターンが多いようだ。
 男性がジェットコースターに必ずしも積極的に乗らないのは、嫌いだからなのか、何かいい歳をした大の大人の男が乗るには気恥ずかしいからなのか、それとももしかしたら実は怖いから乗らないのであって、でも、好きな彼女が、「ねぇ、乗ろうよ」などと、おねだりする以上は、断るのも後々面倒だと思うからなのか、あるいは、、実は内心は乗りたくてたまらなかったのだが、自分から乗りたいなどと言うと、ガキっぽいと思われて癪に障るし、そのようにして誘われる形で乗る分には構わないか、こりゃ、チャンスだとばかりに乗るのか、いやいや、本当は、ワーキャーと叫ぶ彼女(あるいは彼女未満か)と一緒に興奮状態を経験することで親しくなれる絶好のチャンスだと、そんな色気というのか欲得で乗るのか、真相は不明だし、輻湊錯綜しているのだろう。
 とにかく、多くの女性はジェットコースターが好きらしい。とにかく好きだという女性が多い。

 女性は、ジェットコースターの何が一体好きなのか。
 一気に落ちる感覚? 擬似的な落ちる恐怖感を味わっている? あるいは、上り詰めること自体がそもそも好きであり、いったん、空中で浮遊するような夢心地を味わい、でも、それは次の瞬間に訪れる墜落の前の束の間の安らぎであり、つまりは大好きなのは、やはり落下する醍醐味、いや、恐怖感そのものなのか。
 もしかしたら女性は、通常は安定志向で比較的(男性に比べたらという一般的な話だが)慎重に観察し行動する傾向にあるが、そんな己の行動形態や心理傾向に実は、内心、毛嫌いするものがあり、その時に至り、潮が満ちるなら、ドデーとしていた普段の君は何処へいったの? と耳を塞ぎ目を疑いたくなるような、そんな仰天動地の振る舞いをしてしまう、してしまいたい、すべての柵(しがらみ)を断ち切り、コツコツと貯めて来た貯金を湯水の如くはたき、訳の分からな
い碌でもない奴と糸の切れた風船状態となってこの世の果てのあの世まで飛んでいってしまいたい、そんな願望がある、実はあるどころかそんな機会を虎視眈々と狙っている…、そんな邪推さえしたくなってしまう。
 ところで、さて、実は小生は滑り台などの経験はあるが、スペースサンダーナントカという乗り物は一度しか乗ったことがない。こんな偉そうな駄文を綴る資格はないのだ。テーマに関わる経験が乏しいくせに、こんなことを書くなんて、駄文書きの風上にも置けない奴なのである。
 ただ、その乏しい経験からすると、小生の邪推は、やはり幼稚な邪推に過ぎないと判断せざるをえない。女性は男性に媚びたり、あたいは弱い女なの、あたな、助けて、と、ワー、キャー叫んでいるのではなく、ひたすら怖いものが好きなのだと思う。

 ところで、興味深いのは、お化け屋敷(幽霊屋敷)のこと。ジェットコースターでは、女性が主導権を持って、しぶる男性の手を引っ張って、長々と順番待ちをし、意気揚揚と乗り込む。
 一方、恐らくは大抵は女性がやはり主導権を持ち、お化け屋敷へ行こうと言い出すのも女性なのだが、多くはお化け屋敷の前で、「怖い」とかナントカ言って、入るのを拒むというか、むずかりだすのは女性、という事情が見られることだ。
 その場合、男性は、大丈夫、ボクがついているから、なんて言うのかどうかは別にして、女性の手を引いて男性が先導する形で先へ進む。まだ、それほど親しくはなっていないカップルの場合は、仲良くなるチャンスだし、手を大っぴらに握るこの上ない口実になる。薄暗い屋敷の中で、文字通り、手に汗握る体験を楽しむのだ。
 なんとなく、ラブホテル(シティホテル)の前の男女の姿を髣髴とさせる、なんて思うのは小生だけだろうか。
 いずれにしても、言い出しっぺは、お化け屋敷もジェットコースターも女性であるケースが圧倒的だろう。ただ、ジェットコースターの場合は、女性が嬉々として先を急いで乗り込むが、お化け屋敷の場合は、入りたいくせに、屋敷の前で躊躇ったり、ぐずって見せるというのは、不思議である。
 ま、ともかく、なんだか分からないけど、結局のところ女性の心理など男性には分からないのだろうが、ともかく女性は怖いくせに、でも、怖いものが大好きなのだ。

 さて、では、男性は怖いものが嫌いか。実は、本稿の主題はここから始まるのだが、既に長くなりすぎたので、あとは、短めにメモ書きしておきたい。
 ジェットコースターで味わう恐怖感、スピード感、上下運動・回転運動に伴う目くるめく変化の感覚、そうしたものを、実は女性と男性では味わい方、というか、獲得の仕方において違いが見られるのではないか、というのが、本稿の主題だったのだ。
 その獲得の仕方とは何かというと、女性はお化け屋敷やジェットコースターにみられるように、ある一定の施設があり、それは万全の安全が確保されていることが前提であり、つまりはそうした施設という静的で確実な装置の中で、頭の片隅には自分は絶対安全なのだ、その安全の保障は施設側つまりは快感を提供する側により確保されているのだ、という前提の下に、フィーバーする。
 一方、男性は、車やオートバイやスキーやモーターボートなどでの滑降や、疾走や喧嘩やが好きな傾向にある。
 それらは道具を使うことが多いが(だから車、オートバイ、ゴルフクラブ、ナイフなどの道具には拘る)、男性はそうしだ道具を使って、ステージは能動的に振舞うことが可能な場で、スリルを味わうのが好きだということだ。
 路上で、確かに道路という定まった施設はあるものの、男は道具を使って、能動的に自らが動くことで、スピード感、恐怖とギリギリの快感を獲得し、自分の恐怖をコントロールできるという万能感を味わう。
 つまり、紋切り型の分け方を持ち出せば、女性は、あるコントロールされた安全が他者によって保障されたステージの中で、そして安全が確保されているからこそ、思いっきり飛ぶのであり(農耕型)、一方、男性は、使う武器や道具には徹底して拘るが、活躍するステージはできるだけ未知の開かれた領域を求め、常に新しい、必ずしも安全が未だ保障されていないステージの上で快感を狩る(狩猟型)、と暫定的には言えるのではないか、と思うのである。
 こう考えると、ジェットコースターとお化け屋敷の前での女性の振る舞いの違いが理解できるかもしれない。
 つまり、ジェットコースターは一見すると派手だが、固定された装置に他ならないが、つまり、ドデーと坐っているしかないが(ご丁寧にも、ベルトで座席に固定されている!)、お化け屋敷は固定された装置ではあるが、自分の足で先へ進まなければならず、ほんの僅かではあるが、狩猟型の快感獲得という名残があるから、だから、お化け屋敷の前で、中に入りたいくせに、ちょっとばかりぐずってみせるという、行動の違いとなって現れるのだ、と。
 けれど、ここまで来たら、男性・女性の違いというより、人の求める快感の在り方の違いなのだということになってしまうのだろうけれど。


                             (03/05/24)
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by at923ky | 2005-04-11 14:45 | コラムエッセイ


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